【高額療養費制度のしくみとは?】マイナンバーカードで限度額認定証の申請も不要に!

【高額療養費制度のしくみとは?】マイナンバーカードで限度額認定証の申請も不要に! 制度について

障がいのある方は、どうしても通院や入院、手術がすぐ隣に。そのため「医療費」の不安はいつもつきまとってしまいます。

そんなときに知っておきたいのが「高額療養費制度」です。
この制度を使えば、一定額以上の医療費を支払った場合に、超えた分が戻ってきます。また、「限度額認定証」を先に申請しておけば、最初から超えた分を支払わずに済みます。

しかし最近では、マイナンバーカードが使用できる医療機関では、マイナンバーカードを健康保険証として使うことで、限度額認定証を先に申請しなくてもOKなケース。今回はそのしくみを、ご紹介します。

🏥高額療養費制度とは?

高額療養費制度のしくみ

高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が、ひと月(1日~末日まで)の自己負担限度額を超えた場合、その超えた金額を払い戻してもらえる(支給される)制度です。 

高額療養費制度の歴史

1973年に創設され、1990年代までは、いったん病院で医療費を全額払って、後から健康保険組合や市町村国保に申請して戻してもらう方式で、その場では安くならず、現在のように「限度額認定証」を申請し、最初から支払いが軽減される現在の方式は、2000年代以降に整備されました。


全国健康保険協会:🔗高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)

「自己負担限度額」とは?

日本の公的医療保険には、「自己負担限度額」というルールがあり、病気の種類や職業ではなく、収入や年齢に応じて、ひと月あたりの負担額が決められています。

大きく分けると70歳以上と69歳以下とで上限額の条件が変わります。
また、会社員や公務員などの健康保険加入者は標準報酬月額(標報)、自営業の場合などの国民健康保険の加入者は課税所得が基準となります。

<標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)>
社会保険料(健康保険・厚生年金など)を計算するための基準となる金額
仮に、社保や所得税などの天引き3.5万円があって、手取り17万円(交通費2万円含む)の人だとすると、17万に天引き3.5万を戻すと総支給額は20.5万円、非課税の交通費2万円を除いた18.5万円が標準報酬月額の基礎となり、おおよそ19万円等級となります。
会社員の人の給与は残業などで月によって変わることがあり、そのままの金額だと毎月の保険料を計算しにくいので、「このくらいのお給料の人は仮にこの金額を基準にしよう」と国が決めているのが「標準報酬月額」です。

報酬月額>
基本給と各種手当(通勤手当、残業手当など)をすべて含めた1か月の総支給額のこと。社会保険料や所得税、住民税、雇用保険料などが引かれる前の金額です。

<課税所得
所得から給与所得控除などの各種控除(基礎控除・扶養控除など)を差し引いたあと、残った金額(実際に税金がかかる金額)。

<💡あわせて読みたい「課税所得」などの給与関連の用語を網羅!
メジャーサポートサービスブログ:🔗【最低賃金引上げ】2025年10月改定で動く「〇〇万円の壁」ポイント徹底解説!

👛高額療養費制度 自己負担限度額

2025年8月以降、制度の見直しによる、自己負担限度額の段階的引き上げの案が発表されましたが、現在は全面的に見送り・凍結されています。この記事は2025年11月時点での内容となりますが、今後引き上げ案が再び浮上する可能性もありますので、ご注意ください。

<入院時の注意!☝️>
入院したときは、「自己負担限度額だけ払えばOK」というわけではありません。
シーツなどのリネン代や、1日あたり約500円前後の食事代、個室を利用する場合の個室料金などは、自己負担限度額に含まれないため、別途かかります。

70歳未満の方の場合

70歳未満の方は、通常、医療費の自己負担は3割です。
でも、高額療養費制度を使うと、所得に応じた上限額以上は支払わなくてOKになります。

※ここでの「総医療費」とは保険適用される診察費用の総額(10割)を指します。

  • 区分ア[年収1,160万円以上の方(標準報酬月額83万円以上・報酬月額81万円以上の方)]
     上限は「252,600円+(総医療費-842,000円)×1%」
  • 区分イ[年収770万~1,160万円の方(標準報酬月額53万〜79万円・報酬月額515,000円以上〜810,000円未満の方)]
     上限は「167,400円+(総医療費-558,000円)×1%」
  • 区分ウ[年収370万~770万円の方(標準報酬月額28万〜50万円・報酬月額27万円以上〜515,000円未満の方)]
     上限は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」
  • 区分エ[年収370万円未満の方(標準報酬月額26万円以下・報酬月額27万円以下の方)]
     上限は「57,600円」
  • 区分オ[住民税非課税の世帯]
     上限は「35,400円」

さらに、同じ世帯で1年間に3回以上高額医療費があった場合4回目以降はさらに上限が下がります。また、「区分ア」または「区分イ」の場合、住民税が非課税でも「区分ア」または「区分イ」の該当になります。

70歳以上75歳未満の方の場合

70歳以上になると、医療費の自己負担が1~3割に軽くなります。
高額療養費制度の上限も変わります。

  • 住民税非課税の方
     外来は8,000円、入院などの世帯上限は24,600円、さらに低所得の場合は15,000円まで下がります。
  • 現役並みの所得がある方(年収370万円以上、住民税が非課税等であってもこちらに該当
     70歳未満と同じ上限額です。70歳未満と同じく区分ア、区分イ、区分ウで分かれます。
  • 一般的な所得の方(年収370万円未満)
     外来は18,000円、入院など世帯合計で57,600円~44,400円が目安です。

全国健康保険協会:🔗高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)「自己負担限度額とは」

75歳以上の方の場合

75歳以上の方は、後期高齢者医療制度に加入しており、高額療養費制度の対象となります。この制度により、1か月の医療費の自己負担額が所得区分に応じた限度額を超えた場合、超えた分が払い戻されます。後期高齢者医療制度での高額療養費制度については以下をご参照ください。

<後期高齢者医療制度での高額療養費について>
静岡県後期高齢者医療広域連合:🔗医療費が高額になったとき

自己負担限度額 計算ツール

高額療養費の計算が可能な無料ツールがあります!ツールを使えば、あらかじめ自分が支払う医療費の目安を簡単に確認できて便利です。

生活や実務に役立つサイト「Keisan」:🔗高額療養費の計算

🪪マイナンバーカードで「限度額認定証」がいらない!?

以前は高額な医療費がかかりそうなとき、自分で「限度額適用認定証」を申請し、病院に提示する必要がありました。

しかし、現在はマイナンバーカードを「マイナ保険証」として登録すると、利用する医療機関が対応していれば、自動的に医療費の自己負担が上限までに抑えられます。

マイナ保険証を使った限度額認定の手順

  1. 病院の受付でマイナンバーカードをカードリーダーにかざす
  2. 「限度額情報の利用」に同意
  3. その場で自己負担限度額が反映され、窓口支払いが少なくなる

※対応していない病院もあるので、事前に利用する病院に「マイナ保険証使えますか?」と確認しておくと安心です。

全国健康保険協会:🔗マイナ保険証または限度額適用認定証をご利用ください

<💡あわせて読みたい「限度額認定証」含み、年金保険料なども解説しています。
メジャーサポートサービスブログ:🔗【障がい者含む】休職中「社会保険料&年金」の支払いが厳しいときの対策まとめ

💉従来の「限度額認定証」を使う場合

マイナ保険証が使えない医療機関を受診する場合や、マイナンバーカードを発行していない場合は、従来どおり「限度額適用認定証」を申請します。

発行や郵送に時間がかかる場合もあるため、入院が決まっている場合は、早めに申請を行いましょう。

限度額認定証の申請と使用する手順

  1. 加入している健康保険(勤務先の健保に加入している場合は勤務先の健保・国民健康保険の場合は自治体の窓口)に申請書を提出する
  2. 1週間前後で「限度額適用認定証」が届く
  3. それを病院の窓口で保険証と一緒に提示する

💡障がい者や家族がいる場合、月をまたぐ場合のポイント

障がい者の「医療費助成制度」と「高額療養費制度」は併用できることも!!

自治体によっては、障がい者手帳をお持ちの方・障害の等級によっては、医療費助成制度がある場合があり、高額療養費制度と併用できることも。

マイナンバーカードや限度額認定証で、自己負担額まで払ったとしても、その支払った額がさらに医療費助成制度で助成されることもあるので、その場合は、お住まいの市区町村の障がい者医療担当窓口にご確認ください。

また、障がい者医療証や、家族での医療費も一緒に申請できることがあります。

家族みんなの医療費をまとめて申請「世帯合算」

同じ世帯の家族が、同じ月に病院を利用した場合、医療費をまとめて申請できる「世帯合算」が使えます。
これを利用すると、家族全体の自己負担を減らすことができます。
申請の前に、誰がどの保険証を使っているかを整理しておくとスムーズです。

【ご注意!】入院が月をまたぐと、医療費が高くなることも!

入院が月をまたぐと、それぞれの月で高額療養費が計算され、結果的に医療費が高くなることがあります。例えば、12月20日~1月8日まで入院すると、自己負担限度額は2倍になります。
入院日を選べる場合は、できるだけその月内に収まるように調整すると、医療費の節約につながります。

🙋【まとめ】医療費の不安を軽くする、ちょっとした一歩

日本の制度は、使おうと思っても複雑でわかりにくいことが多いですよね。
病気やケガで不安なときに、手続きまで考える余裕がなく、諦めてしまうこともあると思います。

でも今は、難しい言葉も、いろんなツールや情報が助けてくれます。
ツールを利用して、少しずつ制度を紐解いて理解し、制度を利用してみませんか?
意外な制度の助けがあって、医療費の支払いの不安だけでも軽くなることがあります。

この記事が、そんなときの小さな手助けになれば嬉しいです。
どうか皆さんが、心も体も健やかに、穏やかな日々を過ごせますように。


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・全国健康保険協会:🔗高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)
・静岡県後期高齢者医療広域連合:🔗医療費が高額になったとき
・生活や実務に役立つサイト「Keisan」:🔗高額療養費の計算