増えるクマ被害!知っておきたいクマ出没時の障がい者行動マニュアル

増えるクマ被害!知っておきたいクマ出没時の障がい者行動マニュアル 特集記事

2025年11月、弊社メジャーサポートサービス浜松事業所のある静岡県浜松市でも、ツキノワグマの目撃情報が複数あり、「もし遭遇したら…」と心配されている方も多いと思います。子どもの登下校や農作業など、日常の中にもリスクはあります。

特に、杖や車いすを利用されている方など、すぐに動きにくい場合は、よりしっかりとした備えが大切です。

この記事では、足が不自由な方や高齢者、子どもの安全にも配慮した「クマに出会わないための普段の対策」と、「もし出会ってしまったときの行動」について分かりやすくお伝えします。

🐻なぜクマ出没が増えているのか

日本には2種類のクマが住んでいます

世界には8種類のクマがいますが、その中の2種類が、日本で生息しています。

北海道は「ヒグマ」本州以南は「ツキノワグマ」が住んでいて、九州と四国では絶滅もしくは、絶滅の可能性が指摘されています。

環境省の調査(2000〜2003年度)では、日本の国土のほぼ半分ほどの面積にクマが暮らしていることがわかっており、現在は個体数が増え、もっと広い範囲に住んでいるかもしれません。

大きさは、ヒグマの成獣で頭胴長(頭の先からお尻まで)は200~230センチ、体重は150~250キロあたりツキノワグマは頭胴長は110~130センチ、体重はオスが80キロ程度、メスが50キロ程度です。どちらのクマも、メスよりもオスの方が大きくなります。

WWFジャパン:🔗日本に生息する2種のクマ、ツキノワグマとヒグマについて

ツキノワグマの行動範囲

オスは平均で約100平方キロ、メスは約40平方キロほどの広い範囲を動き回ります。

秋田県の調査では、ふだん20〜40平方キロほどのメスも、ブナやドングリが不作の年には100平方キロ以上まで行動範囲が広がったそうです。ちなみに、東京都の山手線の内側の広さや、静岡県熱海市の広さは約60平方キロなので、クマの行動範囲はかなり広いことがわかります。

※ヒグマについては調査例が多くないため、行動範囲の平均的な広さは、まだはっきりとわかっていません。

クマ出没が増えてしまった理由

クマの出没が増えているのは、人口減少や高齢化で耕作放棄地が増えたこと、気候の影響で餌が不足しやすくなったこと、そして保護の取り組みでクマの数が増えたことなど、いくつかの理由が重なっています。
耕作放棄地増加やメガソーラーなどの森林伐採などの影響で、人の生活エリアとクマのすむ場所の境があいまいになり、クマは餌を求めて里に降りてくるケースが増えています。

また、北海道・知床などの観光地では、観光客が与える食べ物やゴミを食べることでクマが人慣れし、人間とクマの距離感が近くなっているともいわれています。

静岡県のツキノワグマはどこにいる?

静岡県では、県南アルプスや富士山周辺を中心(要するに県中東部)にツキノワグマが生息しているとされていましたが、令和7年の今年、浜松市がある静岡県西部で、2025年10~11月だけでも周智郡森町、観音山少年自然の家(浜松市浜名区引佐町)、浜松市浜名区都田町、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の「第3村」のモデル地となり、観光でにぎわう天竜二俣駅付近(浜松市天竜区二俣町)など、複数の場所で目撃され、人が住む低いところまでクマが降りてきていることがわかります。

静岡新聞デジタルWeb:🔗浜松・引佐の観音山付近でクマ目撃情報 周辺施設では宿泊児童が予定を切り上げ帰校

🚨もしクマに遭遇してしまったら

クマ(ツキノワグマ・ヒグマ)は、鋭いツメと大きな歯を持っていて、最高時速 60 キロメートルで走ることもできます。突然の出会いで、引っかかれたり押し倒されたり嚙まれたりする可能性があります。

遭遇したら、まずは落ち着いて後退することが基本。詳しく以下にご案内します。

クマが遠くにいてこちらに気付いていない場合

  • クマに気付かれないように、その場から静かに離れる。
  • 大声を出したり、走ったりしない。
  • 写真撮影のフラッシュも避ける。

<体に障がいのある方や高齢者の場合>
無理に急がず、ゆっくり歩いたり、車いすを操作して後ろに下がりましょう。付き添いの人がいる場合はサポートしてもらい、安全に距離をとることを心がけてください。焦って転んだり、杖を落としたりしないよう注意しましょう。

クマがこちらに気付いている場合や、気づかれても無視されている場合

  • クマの様子を観察しながら、背中を向けないように静かにゆっくり後退する。
  • ゆっくり近づいてくる場合は、人間であることを知らせるため、石や倒木の上に立ち、両腕を大きく振り、穏やかに声をかける。
  • 子グマには絶対に近づかない。母グマが突進する可能性がある。
  • 危険な場合
    • クマが接近をやめない場合は、車内や屋内に避難。
    • 距離が50m以内で逃げ場がなければ、倒木や石の上に立ち、両腕を上げて自分を大きく見せ、あればクマ撃退スプレーを準備。

<ポイント💡>
クマは動くものに反応するため、走ると追いかけられる可能性があります。

<体に障がいのある方や高齢者の場合>
高齢者や障がいのある方は、腕を大きく振るのが難しいことがあります。杖を高く持つ、車いすの背もたれを利用するなどして、体を大きく見せ、声を出して穏やかに人間であることを知らせましょう。可能な範囲で静かに後退します。

距離20m以下で突然遭遇した場合

  • 落ち着いて静かに行動し、走らない。クマから目をそらさずにゆっくりと静かに後退
  • 障害物(立木など)があれば、クマとの間に障害物が入るように移動します。
  • こちらが全く動かないと、敵対行動ととられることもあるので、ゆっくり後退します。

<体に障がいのある方や高齢者の場合>
クマから目をそらさず、安定して後退できる場所を選びます。もし障害物を置けるなら、車いすや杖で簡易的なバリアを作ります。クマを刺激しないように静かに後退します。

クマが突進してきた場合

突進された場合

  • 突進の多くは、威嚇突進行動です。突然突進をやめることも。落ち着いてゆっくり後退し、クマとの間に障害物を置く。
  • 穏やかに声をかけ、クマ撃退スプレーを準備。

本当の攻撃の場合

  • クマ撃退スプレーを目・鼻に向けて全量噴射。(至近距離でスプレーを使用する場合は、できるだけ風上に立つと効果的。)
  • スプレーがない場合、または効かない場合は倒れ込み防御姿勢をとる
    • うつ伏せ腹ばいで、顔と腹部を守ります。
    • 首の後ろで手を組んで、首を保護します。
    • バックパック(リュックサックやバック)は背負ったまま、背中でプロテクター代わりに活用します。
    • 転がされても、その勢いで元の姿勢に戻るようにします。

<体に障がいのある方や高齢者の場合>
車いすや杖を盾のように使います(スプレーが届く範囲にいる場合は噴射します)。高齢者や体に障害がある方は、可能な限り、近くの建物や車両に退避することが最優先です。逃げ場がない場合は、防御姿勢をとりましょう(車いすなら背もたれで背中を守る)。

<まとめ💡>
遠くにいる → 静かに離れる
こちらを認識している → 観察しながら後退、子グマに注意(母グマも近くにいます)
近距離で遭遇 → 落ち着いて静かに、障害物を間に置く
突進された → 威嚇されたら落ち着いて後退、本当に攻撃されたらスプレー・防御姿勢

知床財団:🔗出会った時は(ヒグマ)

🐻障がい者を含む外出時のクマ対策

朝夕の単独行動は避ける

クマは、早朝や夕方(薄明かりの時間帯)に活発に行動し、餌を探します。また、一人だと、逃げる・叫ぶ・身を守るという行動が取りにくく、攻撃されるリスクが増すので、早朝や夕方の単独行動はできるだけ避けましょう。

また、朝夕でなくとも、1人で山道や畑・果樹のある場所など、クマが出現しやすい場所に行かないようにしましょう。

複数で行動し、助け合う

杖や車いすを使う方は、一人での移動はクマに遭遇した時に逃げ場がなく、危険が高くなります。買い物や子どもの送迎、畑作業なども、できるだけ誰かと一緒に行い、地域の人と声を掛け合って、助け合える体制を作っておくと安心です。

音で自分の存在を知らせる

外出時は、杖や車いすに小さな鈴やベルをつけておいたり、ラジオを聴きながら、複数であれば会話をしながら移動することで、クマに自分の存在を知らせることができます。

体に不自由のある方は、“追いかけられて逃げる”のは難しいこともあります。だからこそ、「クマに人がいると気づかせ、逃げてもらう」ための“音・気配”を重視することが現実的かつ安全です。

人に慣れているクマは、逆に人に興味を持って近づく場合もあるため、複数の対策を組み合わせることも大切です。

クマよけスプレーを携帯する

クマよけスプレーを携帯すると心強いですが、対人用の催涙スプレーを、クマよけと称して売っている場合などもあり、どんなクマよけスプレーが良いかや、使い方を事前に確認しておくと安心です。

ダイヤモンドオンライン:🔗クマに9回襲われて生還した男が教える「命を救うクマ撃退スプレー」と「偽物スプレー」の決定的な違い

mont-bell(モンベル):🔗山でのもしもに備える、クマ対策アイテム

地域の「クマ出没マップ」をチェックする習慣を

山や農地へ行く前だけでなく、自分の住んでいる地域で「最近どこで目撃されたか」を定期的にチェックすることで、“安全な時間帯・場所”を意識することができます。

静岡県:🔗令和7年度静岡県ツキノワグマ目撃情報

🧸普段からクマをおびき寄せないように

ツキノワグマやヒグマは、甘い匂いや強い匂いに引き寄せられやすい動物です。“クマの餌”となるものがあると、住まいや畑に寄ってきてしまうことがあります。匂いや餌となるものを放置しないようにしましょう。

<庭や畑>
果実(柿など)は、収穫せずに残っているとクマのごちそうになってしまいます。食用としない場合でも残った果実は収穫してその場に置かずにしっかり処分しましょう。また、果樹の木や雑木、薮がある場所は、定期的に刈り払うとクマが近づきにくくなります。

<自宅で>
果残飯や生ごみ、野菜くずは外に置かず、家や物置などの中で保管して早めに処分しましょう。

特に、ハチの巣がある場合は、早めに取り去り、通学路の草林の刈り取りもこまめに。ちょっとした片づけや管理が、クマとの思わぬ遭遇をぐっと減らしてくれます

【まとめ】地域で守る“クマとの安全な距離”

クマの出没は、気候の影響で山の食べ物が減ったことに加え、人の近くに行けば“おいしいものがある”とクマが学習してしまったことも要因の一つです。クマが人を襲うようになったのは、結局は人が原因じゃないか?という声も聞かれ、クマを守るか追い払うかなど、さまざまな意見が出ています。

けれども今は、まず私たち自身が安全に過ごせるよう、クマとの距離を保つための対策が必要です。過度に怖がる必要はありませんが、「クマに出会わない工夫をする」「家族や地域で声を掛け合う」といった日頃の心がけがとても大切です。

何より大切なのは、自分の身を守ることクマが近づきにくい環境をつくることです。すでに冬眠するだけの食べ物が得られなくなってきているクマは、人里に果樹や残飯などの「えさ場」があることで、「冬眠せずに人里で過ごす」クマ出てきているのでは?という見解もあります。

クマ対策は、地域全体で考えて取り組み、地域の安全につなげて行きましょう。


<関連リンク> 浜松市はクマ目撃情報もありますが、知られざる穴場の観光地も!


<参考リンク
・WWFジャパン:🔗日本に生息する2種のクマ、ツキノワグマとヒグマについて
・知床財団:🔗出会った時は(ヒグマ)
・ダイヤモンドオンライン:🔗クマに9回襲われて生還した男が教える「命を救うクマ撃退スプレー」と「偽物スプレー」の決定的な違い
mont-bell(モンベル):🔗山でのもしもに備える、クマ対策アイテム
静岡県のツキノワグマ:🔗令和7年度静岡県ツキノワグマ目撃情報