障がい者雇用がますます広がる!法定雇用率引き上げで増える“働くチャンス”とは?

障がい者雇用がますます広がる!法定雇用率引き上げで増える“働くチャンス”とは? 就労について

「障がいがあるから、一般企業での就職なんて無理――」そんなふうにあきらめていませんか?

現在、厚生労働省による法定雇用率の段階的引き上げが行われ、障がい者雇用の枠が広がっています。障がいのある方にとって、これまで難しかった一般企業での就職が以前よりも挑戦しやすくなり、追い風となっています。

この記事では、最新の法定雇用率の動きをふまえ、一般企業で働きやすくなるポイントや、ハローワークの上手な活用法を、精神・身体それぞれの障がいの視点からやさしく解説します。一般企業への就労を考える方は、参考にしてみてください。

この記事は2025年12月の時点の情報で作成されています。

👩‍🦽法定雇用率とは?その達成率の現状

法定雇用率とは?

法定雇用率とは、企業や自治体に「職場で働く人の中に、一定以上の割合で障がいのある人を雇うこと」を義務付ける制度で、実雇用率が法定雇用率を下回ると、企業は行政指導や納付金などの罰則を受けることがあります。

  • 実雇用率:その企業で実際に働いている障がい者の割合
  • 法定雇用率:国が定めた最低限雇うべき障がい者の割合

法定雇用率の引き上げ&企業の対象拡大について

ここ数年の法定雇用率の段階的引き上げ

2023年には2.3%だった法定雇用率が、2024年4月には 2.5% に上がり、さらに 2026年7月には 2.7% まで引き上げられる予定です。

法定雇用率を守らなければならない企業の拡大

これまでは、障がい者雇用促進法により、従業員 43.5人以上 の企業が障害者を一定割合で雇う義務を負っていましたが、2024年4月1日以降40人以上の企業に拡大されています。2026年7月以降は、37.5人以上の企業も対象となる見込みです。

また、法定雇用率の対象となる企業には、毎年6月1日時点の障がい者雇用状況をハローワークへ報告する義務があります。さらに、障がい者の採用や定着をスムーズに進めるため、職場で中心的な役割を担う 「障がい者雇用推進者」 を選任するよう、努力義務も求められています。

これらの仕組みにより、より多くの企業が障がい者雇用に向き合い、働きやすい環境づくりを進めていく流れが強まっています。

厚生労働省:🔗障害者雇用対策

進んでいるけれど、まだもう一歩──最新の障がい者雇用の状況

2024年の民間企業での障がい者の雇用者数は 約67万7千人と過去最高 を更新した一方で、実雇用率は2.41%ほど。法定雇用率を達成している企業も約46%と、半数に届いていません。

特に小規模企業では達成が難しく、雇用義務が新たに発生した従業員 40〜43.5人未満の企業での実雇用率は2.10%、達成率は約33%厳しい状況が続いています。

障がい者雇用は着実に広がりつつも、多くの企業がまだ “あと一歩” の段階にあります。

👩‍🦯‍➡️障がいがある人はどう働くべきか?

企業が障がい者を採用する際は、働きたい条件が合わないと雇用が難しくなります。その際、企業にとっては「カウント」に該当するかどうかが重要です。障害者雇用の「カウント」とは、法定雇用率の算定に含まれる人数のことで、身体・知的・精神の各手帳を持ち、週20時間以上働く人が対象です。

これを踏まえて以下を参照ください。

精神障がいのある人のケース

精神障がいがある場合、新しい環境に入る時や、長時間の業務は負担になることが多いため、働き方としては、無理なく働ける時間や仕事内容、支援が整った環境で、長く続けられる職場が理想です。

短時間勤務でもカウントされるチャンス拡大

短時間勤務(週20時間以上30時間未満)でも“1人分”としてカウントされる「カウント方法の特例」があります。フルタイム勤務が難しい人でも、採用されやすくなります。

👉働き方のポイント

  • 週10〜30時間の短時間勤務求人をチェック
  • 障害者手帳の等級や条件を確認してカウント対象か確認
  • ハローワークや就労支援サービスを活用
  • 相談支援員さんなど、特性を理解してくれる人や支援機関を通して安心して働ける職場を探す

<💡障害者雇用促進法 「カウント方法の特例」とは?>
障害者雇用促進法の特例では、短時間勤務でも雇用人数にカウントできます。
週20〜30時間勤務は「1人分」、週10〜20時間勤務は条件を満たせば「0.5人分」として計算可能です。

身体障がいのある人のケース🧑‍🦼‍➡️

身体障がいのある方は、通勤や長時間の勤務は体への負担がかかり、難しい場合が多くあります。しかし、フルタイムだけでなく、短時間勤務や在宅勤務、軽作業など、体への負担が少ない働き方も可能です。自分の体調や生活に合わせた働き方を選ぶことで、無理なく長く働けます。

働きやすい職場づくりと合理的配慮

最近、バリアフリーの職場や合理的配慮(※)が広がってきています。
法改正により、企業は働きやすい環境づくりや、障がいのある人への配慮を整えることが求められるようになりました。特に重度の障がいがある方は、雇用カウントが2人分となる制度もあり、雇用のチャンスが広がる可能性があります。

👉チェックポイント

  • 障害者手帳の等級や「重度」に該当するかを確認(主には、身体障害者手帳は等級が1級または2級療育手帳は障害程度の区分が「A」、精神障害者保健福祉手帳はどの等級でも重度に該当しない)
  • 通勤経路や職場のバリアフリー状況、在宅勤務の有無、業務内容を企業に確認
  • 合理的配慮の相談窓口(福祉担当、総務、ハローワークなど)を利用

<💡合理的配慮とは?>
障害者雇用における合理的配慮とは、障害のある人が他の従業員と同じように働けるよう、個々の困りごとに応じて調整や支援を行うことです。
2024年4月1日からは、障害者差別解消法により、企業など事業者に法的義務として求められています。ただし、配慮が過大な負担になる場合は、代わりの対応も認められています。

😞法定雇用率が上がる「事情」と「問題」

少子高齢化で働き手が不足している👩‍🌾

日本では少子高齢化と人口減少が進み、働き手が不足しています。そのため、多くの企業が採用の幅を広げる必要に迫られています。しかし、なかなか人材が集まらない現状もあり、こうした状況を支える取り組みの一つが、法定雇用率の引き上げです。

多様な人が活きる社会へ👩‍🦽

「障がいのある人も自然に働ける社会にしたい」という考えや、「多様な人材を活かすことで企業の可能性も広がる」というダイバーシティの意識が、少しずつ広がっています。そのため、今は、制度の改善だけでなく、企業の意識もさらに変わっていくことが大切だと伝え時代へと、切り替わりつつあります。

企業側の思惑と問題🏢

企業の中には、こんな問題も。

・すでに自社で働いている従業員のうち、障がいが軽度で障がい者手帳を持っていない人に手帳の申請を促す
手帳を持っていることを告知していなかった従業員に対して、法定雇用率を守る目的だけで申告を求める
・自社で働く職員の周りで、すでに一般企業で働けている障がい者手帳を持つ人を、法定雇用率を守る目的だけでスカウトする
障がい者手帳を持つ人をあえて採用し、軽微な作業に従事させ、その人が活躍できない環境に置く

そのため、単に法定雇用率を拡大するだけでは、障がい者が不利な状況に置かれることもあり、なお課題が残っています。

しかし、障がい者を雇用することは、企業利益だけではない地域貢献や、多様な人材を受け入れて活かすダイバーシティ経営の一環として評価されます。
障がい者の強みを活かし、働きやすい職場を作ることが、企業のブランド向上や組織活性化につながります。

🏢ハローワークなど「就活支援サービス」をうまく使うコツ

障害者職業相談窓口を利用する

ハローワークには、障がい者専用の相談窓口があります。一般窓口ではなく、障害者専門の職員さんがいる窓口を利用すると、自分の特性に合った求人や配慮を受けることができます。

また、ハローワークでは、「どんな配慮が必要か」を確認してくれるので、配慮してほしい内容、働きたい時間帯(フルタイム/短時間)、通勤手段、体調の波などを整理しておくと、支援員もあなたに合った企業を探しやすくなります。

障がいのあるかたの失業保険受給期間

障害のある方がハローワークで仕事を探す場合、失業保険(雇用保険の基本手当)は「就職困難者」として、一般の方(90日から150日程度)よりも長く受け取ることができます。受給期間は、これまでの雇用保険の加入期間や年齢によって異なり、おおよそ次の通りです。

<障がい者の失業保険受給期間>
・雇用保険加入期間1年未満:150日
・雇用保険加入期間1年以上:45歳未満は300日45歳以上65歳未満360日

採用されにくい時は、就労移行支援サービスや就労継続支援事業所も

一般企業になかなか自分に合う仕事が見当たらなかったり、採用されない場合は、就労移行支援サービスや就労継続支援事業所(A型/B型)で、働くための体力づくりをしたり、生活リズムを整えることも有効です。(就労継続支援事業所であれば、工賃や給与が出ます。)

その人に、より合った就労先に推薦されたり、履歴書作成や面接同行の相談ができたり、ハローワークとも連携してくれるため、一般就労への道筋が高まります。

🧑‍🦽‍➡️障がいの種類別の特性と働き方

障がいの種類特性・配慮働きやすい職場・働き方の例
精神障がい集中力や体調の波に配慮。短時間勤務の特例あり短時間勤務、在宅ワーク、事務・軽作業、支援のある職場
身体障がい通勤・移動のしやすさ、バリアフリー、合理的配慮障害者手帳の等級での配慮、短時間/フルタイム、軽作業やオフィスなど

自分の状態と希望に応じて、「無理しない働き方」をあきらめずに探すことが重要です。

🙆【まとめ】無理なく、自分に合った働き方を見つけよう

最近は、企業が採用時に「障がい者手帳の有無」を確認することが増えています。これは法定雇用率の関係もありますが、職場での配慮やトラブル防止のためでもあります。そのため、障がいのある方が一般企業で働くのは、まだ簡単ではないのが現状です。

働き始めるのに不安があったり、就活に踏み出せないなどあれば、一人で抱え込まずにハローワークや相談員、就労支援サービスを利用して、自分のペースで探してみましょう。法定雇用率の引き上げで、働く選択肢は少しずつ広がっています。

きっと安心して働ける場所がみつかります。焦らず、無理せず、あなたに合った働き場所が見つかりますように。


<関連リンク>失業保険の延長申請についてはこちらで確認!

<参考リンク
厚生労働省:🔗障害者雇用対策
厚生労働省:🔗事業主の方へ
ハローワーク:🔗ハローワークインターネットサービス
パーソル:🔗就労継続支援とは?内容や対象者・A型/B型の違いをわかりやすく解説
サンクスラボ:🔗障がい者法定雇用率の引き上げはいつから?今後の予定となぜ上がるのか解説

障がい者雇用がますます広がる!