猛暑を乗り切ろう!車いす利用者の熱中症&夏バテ予防術

猛暑を乗り切ろう!車いす利用者の熱中症&夏バテ予防術 特集記事

こんにちは、メジャーサポートサービスで在宅勤務しています車いすユーザーのYです。
ここ一週間くらいで本格的に暑くなり、既にエアコンをつけないと日中在宅で過ごせなくなりましたね。まだ早いと油断したYは熱中症にかかり大変でした。

まず、「熱中症」と「夏バテ」の違いについてご説明いたします。
「熱中症」と「夏バテ」は、どちらも暑い季節に体調不良を引き起こすものですが、原因や症状、対処法が異なります。以下にわかりやすくまとめます。

熱中症と夏バテとは?

熱中症(ねっちゅうしょう)

■ 原因

高温多湿の環境で、体温調節がうまくいかなくなり、体内に熱がこもることが主な原因です。水分や塩分の不足も要因となります。

■ 主な症状

  • めまい・立ちくらみ
  • 吐き気・頭痛
  • 筋肉のけいれん(足がつる)
  • 意識障害(重症)
  • 高体温(体が熱い)

■ 対処法・予防

  • 涼しい場所に避難
  • 水分・塩分を補給(経口補水液など)
  • 衣服をゆるめ、体を冷やす
  • 通気性の良い服装、帽子を着用

夏バテ

■ 原因

高温多湿な気候が続くことで、自律神経が乱れたり、食欲が低下したりして、体の機能が低下することが原因です。

■ 主な症状

  • 食欲不振
  • だるさ・倦怠感
  • 下痢・便秘
  • 寝不足・疲れが取れない
  • イライラ感

■ 対処法・予防

  • バランスの良い食事(冷たい物の摂りすぎに注意)
  • 質の良い睡眠
  • 適度な運動や湯船に浸かるなどして自律神経を整える
  • 冷房の使いすぎに注意

車いす利用者の方にとって、夏の暑さや夏バテは、身体的な制約や環境的な制限から、より深刻な健康リスクにつながることがあります。以下に、「車いす利用者と夏バテ」の関係、注意点、対策についてご案内します。

車いす利用者と夏バテ:特有のリスク

1. 体温調節がしにくい

  • 下半身や一部の身体に麻痺や感覚鈍麻がある場合、発汗が少なくなり、熱が体内にこもりやすい
  • 自分で体温の異常に気づきにくく、熱中症に進行しやすい

2. 移動範囲の制限

  • 暑さを避けたくても、バリアフリーではない建物や道路状況で、屋外を移動せざるを得ないことがある。
  • 日陰を通れなかったり、休める場所が見つかりにくいことも。

3. 水分補給の難しさ

  • 手の可動域に制限がある方は、自分で水分をとるのが難しい場合がある。
  • 外出中にすぐに水分補給できる環境がないと、脱水を起こしやすい

4. 暑さへの反応が鈍い場合も

  • 脊髄損傷や神経障がいでは、暑さに対する感覚が鈍くなっていることがあり、知らず知らずのうちに体温が上がってしまうこともあります。
(写真:photoAC)

対策と工夫

1. 熱中症予防の基本

  • こまめな水分・電解質補給(スポーツドリンクや塩分タブレットなど)
  • タイマーやスマホで「水分摂取の時間」を定期的に通知する
  • 冷却グッズの携帯(冷感タオル、保冷剤入りクッション、扇風機など)

👉 支援者の対応: 時間を見て声をかけ、水分や冷却グッズの使用を促すことが大切。

2. 衣類と装備の工夫

  • 通気性の高い服や帽子を選ぶ(首元を冷やすのも効果的)
  • 車いすのシートに敷く「冷却パッド」や「メッシュクッション」などで蒸れを防ぐ

👉 支援者の対応: 必要に応じて着替えや装備の調整を手伝い、快適な状態を保つ。

3. 移動ルートと休憩場所の確認

  • 涼しいルートや休憩スポット(コンビニ、公共施設、日陰など)を事前にチェック
  • 可能であれば、同行者と一緒に行動して無理を避ける

👉 支援者の対応: 外出時は日陰や屋内ルートを優先し、休憩ポイントもこまめに確保。

4. 体調管理の工夫

  • 「汗が出ない」「顔が赤い」「ぼんやりする」など、熱中症の初期症状に注意
  • 定期的に体温や脈拍をチェックする習慣をつける日々の体温・体調チェックを習慣化
  • 食事は冷たいものに偏らず、たんぱく質・ビタミンをしっかり摂取
  • 疲れを溜めないよう十分な休息・睡眠をとる
  • 睡眠時にもエアコンや扇風機で室温を管理

👉 支援者の対応: 本人の発言に頼りすぎず、顔色や様子の変化を観察し、早めに対応する。

5. 室内環境の工夫

  • 室温はできるだけ28℃以下を目安に保つ(冷房や除湿器を活用)
  • 扇風機やサーキュレーターで空気を循環させ、熱気がこもらないようにする
  • 遮光カーテンや断熱シートを使って日差しを遮る
  • 室内でもこまめに水分をとるよう習慣化を

👉 支援者の対応: エアコンの操作や日差し対策など、室内環境の整備を積極的に行う。

6. 水分補給の工夫

  • ストロー付き保冷ボトルや、ワンタッチで開く水筒を活用する
  • 首にかけられる水筒や、ハンズフリーボトルなど、取りやすい配置に
  • 水分摂取の補助が必要な方は、周囲のサポートがスムーズにできるよう準備する

👉 支援者の対応: 自発的に水を飲まない場合も、無理のない範囲で定期的に促す。

(写真:photoAC)

周囲や支援者へのアドバイス

  • 「本人が大丈夫と言っても、感覚が鈍っている可能性がある」ため、周囲が体調や様子を注意深く見ることが重要。
  • 車いすユーザーが「暑い」と感じる前に、先回りして涼しい環境に誘導したり、水分を渡す配慮を。
  • 「一緒に行動する・観察する・備える」ことが、夏のリスク軽減に直結します。

緊急時の対応(熱中症が疑われる場合)

  • 顔が赤い・ぼんやりする・返答がおかしい場合、すぐに日陰や冷房の効いた場所に避難
  • 衣服を緩めて体を冷やす(首・脇・足の付け根を冷やすと効果的)
  • 水分が飲める場合は冷たい水や経口補水液を
  • 意識がない・嘔吐する・呼吸が乱れている場合はすぐに救急車を要請(119)

まとめ

課題対策例支援者の対応例
発汗が少ない
熱がこもりやすい
保冷シート・冷感タオルを活用暑さに気づいたらすぐ冷却グッズを渡す
水分補給が難しいストロー付きボトルや給水サポート定期的に水分を勧める
飲みやすい容器を準備
暑さに気づきにくい体温計・タイマーで管理顔色や反応を観察し、異変に早く気づく
移動に制限あり涼しいルートを事前に確認移動前に経路確認・休憩場所を提案
室内でも熱中症リスクがある室温管理、空気循環、遮熱対策空調・日よけを整える
本人の状態を定期確認
周囲の気づきが遅れる可能性がある声かけ・体調観察を習慣に「大丈夫?」ではなく、「水飲もうか?」など具体的に
(写真:photoAC)

最後に

車いす利用者の方が夏を快適に、安全に過ごすためには、「事前の準備」と「無理をしない心がけ」がとても大切です。

  • 暑さに弱いことを恥ずかしがらず、周囲と共有することが命を守る第一歩です。
  • 自分のペースで過ごし、休むことを優先する勇気を持ちましょう。
  • 小さな異変に早く気づけるよう、日常的な体調観察を大切に。

もし介助者がいる場合は、体調の変化に敏感になること、声かけをこまめに行うことが非常に重要です。

無理をせず、安心できる環境づくりを心がけて、どうか健やかに夏をお過ごしください。