こんにちは、Kです。
私は以前、言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist、略してST)として子どもたちの発達支援に携わってきました。現在は、心と体のバランスを大切にしながら在宅で仕事をしています。今日は「吃音(きつおん)」というテーマについてお話ししたいと思います。
「うまく言葉が出ない」「言いよどんでしまう」といったことで悩んでいる方や、身近な人の話し方が気になる方に向けて、少しでも役立つ情報をお届けできれば嬉しいです。
言語聴覚士(ST)とは?
まず、言語聴覚士について少し説明させてください。
言語聴覚士は、言葉や発声、聴覚、さらには飲み込みなどの機能に困難を抱える方を支援する専門職です。たとえば、吃音や発音の問題、声がかすれる、嚥下障害(飲み込みが難しい)など、幅広く対応します。病院や学校、リハビリ施設などで、患者さんや子どもたちが安心して生活できるようサポートしています。私自身も、これまで子どもの言語発達の支援に携わってきました。その経験を通して、言葉の困難に寄り添うことの大切さを日々感じています。
吃音とは?
吃音とは、言葉がスムーズに出にくくなる状態のことです。具体的には以下のような特徴があります。
- 言葉の繰り返し(例:「こ、こ、こんにちは」)
- 言葉の引き伸ばし(例:「かーーみ」)
- 詰まる(言葉が出てこない)
吃音は単に心理的な問題ではなく、日によって症状が変わることもあり、人によって出方や程度が大きく異なります。
「努力不足」ではない吃音の正体
吃音は、本人の「話す努力」が足りないから起こるものではありません。
脳の言語処理の働きや、環境との相互作用が関係していると考えられています。
例えば、言葉を組み立てるスピードが、話そうとするスピードについていかないことで、言葉がうまく出てこなくなることがあります。さらに緊張や周囲の反応が加わると、吃音がますます目立ってしまうことも。「話そうとすればするほど、うまくいかない」──そんな苦しさを抱えている方も多いのです。
子どもの吃音と向き合うには?
子どもの発達過程で一時的に見られることもあります。しかし、「治すこと」ばかりに意識を向けると、かえって不安を強めてしまうことがあります。子どもへのサポートのポイントは以下です。
- 言葉をせかさず、ゆっくりと聞く姿勢を大切にする
- 「ゆっくり話して」と言わず、「あなたの話を聞かせてね」と伝える
- 吃音があっても、話の内容に注目して関心をもつ
- 子どもが安心して話せる環境を作る
親や周囲は「どう話してほしいか」よりも、「どんな気持ちで話しているか」に目を向けることが大切です。
大人の吃音──気づかれにくい生きづらさ
吃音は大人になっても続くことがあります。とくに職場や人間関係で「話すこと」が求められる場面では、強いプレッシャーを感じる方も多いです。
大人の吃音でよくある悩み
- 会議や電話が苦手、自己紹介がつらい
- 名前を言うときにつかえる
- 周囲にからかわれた経験があり、話すのが怖くなった
- 「話すのが遅い人」と誤解される
吃音を隠そうとして、話すこと自体を避けてしまうケースも少なくありません。
生きづらさを軽くするための工夫
吃音は「克服」よりも「付き合い方」が大切です。自分を責めるのではなく、「どうすれば安心して話せるか」を一緒に考えていくことが支えになります。
日常でできる工夫の例
- 言葉に詰まったときは、深呼吸して一呼吸おいてから話す
- 苦手な場面では、あらかじめメモや資料を活用する
- 話しやすい友人や職場環境を選ぶ
- 自分の吃音について、信頼できる人に話しておく
言葉に詰まっても、決してあなたの価値が下がることはありません。むしろ、どんな時でもあなたらしく、無理なくコミュニケーションできる方法を見つけることが重要です。
相談できるところ
吃音について困っている場合、以下の場所に相談できます
- 小児科や耳鼻科、ことばの相談外来
- 言語聴覚士(ST)がいる病院やリハビリ施設
- 学校の相談員やスクールカウンセラー
- 吃音を専門に支援するNPO団体や当事者グループ
- NPO法人 全国言友会連絡協議会(全言連)
全国言友会連絡協議会は、吃音を持つ人々の自助グループ「言友会」の全国的なネットワークであり、吃音者の支援や啓発活動を行っています。全国30ヵ所以上に支部があり、定期的な例会やイベント、講演会を通じて、吃音に対する理解を深め、吃音者が前向きに生きるためのサポートを提供しています。全言連は、吃音者の権利を守り、社会的な支援を求める活動にも力を入れています。
- NPO法人 全国言友会連絡協議会(全言連)
これらの施設や団体では、吃音に関する専門的な支援やアドバイスを受けることができます。自分に合った支援を見つけ、前向きに向き合うための第一歩を踏み出せることを願っています。
終わりに:「ことばの詰まり」の奥にあるもの
吃音は見た目ではわかりにくく、誤解されやすいものです。
でも、話すことに困難があるからこそ、人の気持ちに寄り添える力もあります。
私も、かつてことばに詰まる子どもたちと向き合ってきました。大切なのは話すスキルだけでなく、「話すことへの安心感」です。あなたらしいペースで、あなたらしい声を大切にしていけますように…。
補足:関連記事のご紹介
吃音をはじめ、言葉や心、体にまつわる「伝えにくさ」「動きにくさ」は誰にも起こりうるものです。
どのテーマにも共通しているのは、「努力ではなく理解と支えが大切」ということ。
以下の記事では、それぞれの視点から“安心して自分らしく生きるためのヒント”をお届けします。
🔹 [ASDとコミュニケーション]
吃音と同じように“対人コミュニケーションの難しさ”に焦点を当て、ASD(自閉スペクトラム症)の特性を理解しながら、より良い関わり方を考えます。
🔹 [発達障害がある人の疲れやすさ]
「心と体のバランスを大切にする」というテーマで、疲れやすさの原因と、その特性に合った生活リズムの工夫を紹介しています。
🔹【実体験】理学療法士・作業療法士が病院を変えた!2000年代から始まったリハビリ革命
筆者自身の体験をもとに、リハビリの力と医療現場の変化を紹介。
「昨日より少し動けた」という小さな一歩が、自分の体と心を確実に変えていく──そんな回復のプロセスを描いた記事です。
体や生活の困難と向き合うすべての方におすすめです。
言葉・心・体。それぞれのテーマを通して、「自分らしいペースで前に進むこと」の大切さを感じていただけたら嬉しいです。

