2025年11月から、静岡県の最低賃金は 時間額1,097円 に引き上げられました(前年度は1,034円)。
静岡労働局:令和7年度「静岡県最低賃金」の改正を決定しました
全国的にも最低賃金の平均が 1,121円 に上昇し、過去最大の引き上げ幅となっています。この大幅な賃上げは、障害のある方が通う 就労継続支援A型・B型事業所 にも少なからず影響を及ぼすことが予想されます。
特に、A型事業所では社会保険の加入条件や手取りの変化、B型事業所では工賃の見直しなど、利用者や事業所に関わる重要なポイントが出てきます。この記事では、最新の最低賃金引き上げを踏まえ、就労継続支援事業所にどのような影響があるのかを解説します。
A型事業所への影響
最低賃金改定による賃金への影響
A型事業所は、利用者を雇用契約の形で受け入れるため、 最低賃金が直接適用 されます。
- 今回の改定により、従来より低い賃金で働いていた利用者も、最低賃金に合わせて 給与を引き上げる必要 があります。
- 例えば、これまで1,034円で働いていた方は、2025年11月1日以降、1,097円に引き上げ られます。
- 利用者の収入増加は生活の安定やモチベーション向上につながりますが、事業所側は給与支出の増加に備える必要があります。
社会保険適用拡大による影響
2026年10月から、従業員51人未満の小規模事業所も社会保険加入の義務対象となる予定です。
- A型事業所の利用者が一定の条件(週20時間以上勤務、月収8.8万円以上など)を満たす場合、健康保険・厚生年金の加入が義務化 されます。
- これにより、給与から本人負担分の保険料が差し引かれるため、一時的に 手取りは減少 する可能性があります。
- 一方で、老後の年金や病気・ケガ時の保障(傷病手当金など)が充実し、将来の安心につながる メリットがあります。
B型事業所への影響
工賃への影響
B型事業所では、利用者が工賃として報酬を受け取ります。B型は雇用契約を結んでいない為、最低賃金の引き上げに直接的な適用はありませんが、間接的に 工賃の相対的価値 に影響します。
- これまでの工賃が1時間あたり数百円だった場合、A型や他の就労形態との格差が広がることになり、利用者の意欲や満足度に影響 することも考えられます。
- 事業所は、工賃改善のための 生産性向上や作業効率の改善 を検討する必要があります。
利用者への影響と課題
利用者にとってのメリット
- A型利用者は最低賃金の引き上げで給与が増え、B型利用者も工賃改善の取り組みにより収入向上の可能性があります。
- 社会保険加入により、病気やケガの際の休業補償、医療保障、将来の年金など、生活の安心が増します。
- 年収の壁を気にせず働けるため、体調や生活状況に合わせた柔軟な就労が可能になります。
利用者にとっての注意点
- 社会保険料の負担により手取りは減少する可能性があります。
- 将来の保障が増えるとはいえ、短期的には給与額が減ることを理解しておく必要があります。
まとめと今後のポイント
- 最低賃金の引き上げは、A型利用者の給与改善につながる一方、事業所の負担増をもたらします。
- 今後の社会保険適用拡大で、手取り減少のリスクがある反面、生活保障や将来の安心につながるメリットがあります。
- B型事業所も間接的に影響を受けるため、工賃改善や生産性向上、助成金活用が重要です。
- 利用者一人ひとりが制度変更の内容を理解し、安心して働き続けられる環境を整えることが不可欠です。
最低賃金改定は、短期的には事業所・利用者双方に調整の負担をもたらしますが、長期的には 安定した収入と保障の拡充、安心した就労環境 を実現する大きなチャンスです。制度変更に備えて、早めの情報収集と支援策活用が必要となります。
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