目次
はじめに
コミュニケーションの難しさに悩んでいるのは、あなただけではありません。自閉スペクトラム障害(ASD)を抱える方の多くが、コミュニケーションの問題や周囲の理解不足によって、同じような苦しみを経験しています。
私は、就労継続支援A型事業所で職業指導員として働くことで、ASDの方と接してきました。一緒に仕事をする中で、反省することや気付いたこともあります。
このブログでは、ASDと職場でのコミュニケーションについて、就労継続支援A型事業所の職業指導員としての視点からお伝えしていきます。
※この記事では個人情報にも配慮し、仕事内容や利用者さんとのやり取りなど、一部事実と異なる部分があります。
ASDとコミュニケーションの困難さ
一般的にASD(自閉スペクトラム障害)は、社会性やコミュニケーションの障害を特徴とする発達障害だと言われています。ASDを抱える人は、このようなコミュニケーションの困難さを経験することがあります。
ここで紹介するのは「一般的に言われている」ことなので、すべてのASDの方が、必ずしも当てはまるとは限りません。
非言語コミュニケーションの理解
ASDの人は、表情や声のトーン、ジェスチャーなどの非言語コミュニケーションを理解するのが苦手だと言われています。そのため、相手の意図を正確に読み取ることが難しく、誤解が生じやすいようです。
相手視点の理解
ASDの人は、相手の考えや気持ちを推測するのが苦手だとも言われています。そのため、相手にとって適切な発言や行動が判断できず、空気が読めないと言われたり、配慮に欠けると思われたりすることがあるようです。
言葉の理解
ASDの人は、比喩表現や皮肉、冗談などの抽象的な言葉の理解が苦手です。また、曖昧な指示や多義的な表現も理解しにくいため、誤解を生じやすいです。
会話のやり取り
ASDの人は、会話のタイミングやテンポを合わせるのが苦手です。また、一方的に話し続けてしまったり、質問しても答えが返ってこなかったりすることがあります。
感情表現
ASDの人は、自分の感情を言葉や表情で表現するのが苦手です。そのため、周囲から無表情に見られたり、感情が薄いと思われたりすることがあります。
これらの困難さは、ASDの人にとって大きなストレスとなり、社会的な孤立や職場でのトラブルにつながる可能性があります。
ASDとコミュニケーションの困難さを理解することは、ASD当事者と周囲の人との相互理解を深め、良好な関係を築くために重要です。
ASDについて理解を深め、コミュニケーションの工夫をすることで、誰もが安心して過ごせる社会を作ることができます。
職場における誤解と偏見
ここでは、一緒に仕事をする中で、私が感じたことを中心にお伝えしていきます。私の個人的な意見なので、ただの参考程度に考えて頂けたらと思います。
曖昧な指示が苦手
ASDの人は、「非言語コミュニケーションの理解や相手視点の理解が苦手」だと一般的に言われています。そのため、仕事上の指示や説明が理解できないと評価を受けることがあります。
これには、指示を伝える側にも問題があると感じています。というのも、「曖昧な指示」をこれまで様々な場面で見てきたからです。
この曖昧な指示には、「そんなこと言わなくても分かるだろう!」という前提があるのだろうと感じています。しかし、言わないと分からないことも思った以上に多いと感じます。
この「曖昧な指示」が、ASDの方を混乱させているのではないでしょうか?
仕事の能力への偏見
ASDの人は、特定の分野に強い興味やこだわりを持つことがあります。そのため、周囲から特定の分野しかできない人、融通が利かない人などの偏見を持たれることがあります。
ASDへの偏見
ASDは比較的新しい概念であり、社会全体での理解が進んでいません。そのため、ASDに対する誤解や偏見が根強く残っており、職場においても差別や偏見につながることがあります。
これらの誤解や偏見は、ASD当事者にとって大きなストレスとなり、職場での孤立や能力の低下につながる可能性があります。
私も深く反省するべき点なのですが、ついつい障害特性に注目しがちです。しかし、障害特性ではなく、その人をしっかり理解することが大切ですよね!
コミュニケーションのヒント
ASD(自閉スペクトラム障害)は、社会性やコミュニケーションの障害を特徴とする発達障害です。ASDを抱える人は、職場において信頼関係を築くのが難しいと感じる場合があります。
以下は、ASD当事者が職場において信頼関係を築くためのヒントです。
自己理解を深める
まずは、自分のことを知ることから始めましょう。自分のASDの特性を理解することは、周囲の人とのコミュニケーションを円滑にするために重要です。自分の強みや弱みを把握し、どのように周囲に伝えれば良いのかを考えましょう。
自分のコミュニケーションの癖を知る
ASDの人は、非言語コミュニケーションの理解や相手視点の理解が苦手です。そのため、周囲の人とのコミュニケーションには、工夫が必要です。
まずは、自分のコミュニケーションの癖を見つけてみてはいかがでしょう。もしかしたら、自分が話したいことを、一方的に話していませんか?あなたが話しているとき、相手を少し観察してみましょう。
スケールで考える
ASDを抱える方は、白黒思考で考えがちだと感じています。そのため、傷ついたり、落ち込んだりすることも多いのかなと思います。
白黒思考が力を発揮する場面もありますが、点数をつける(スケールで考える)癖をつけても良いかもしれません。
点数をつけることで、マイナスの部分だけでなくプラスの部分にも意識が向くようになります。落ち込むような出来事があったとしても、自分を正しく評価できるはずです。
無理せず、自分のペースで
障害の有無に関わらず、信頼関係を築くためには時間がかかります。無理せず、自分のペースで取り組むことが重要です。
まとめ
ここまで、私の経験をもとにお伝えしてきました。特性も人によって異なることや、偏見に悩まされている人もいることは、様々な方に知って頂きたいと感じています。
障害に関係なく、「それぞれが個人として尊重される」職場環境って良いですよね。そんな職場環境を整えていけたらと感じています。