就労継続支援A型事業所の歴史とその意義

就労継続支援A型事業所の歴史とその意義 A型事業所について

障がいのある人にとって「働く」ということは、単に収入を得るだけでなく、社会参加・自己実現・生活リズムの構築といった意味も含まれます。日本では戦後、「授産施設」「福祉工場」といった形態から、雇用契約を伴う就労継続支援A型事業所など、多様な就労支援制度へと制度が移り変わってきました。本記事では、就労継続支援事業所の誕生の背景から現在までの流れを、A型事業所を主軸に制度的・歴史的な視点から掘り下げます。

※本記事の内容は 2025年11月時点 の情報に基づいています。

戦後から1990年代までの働く場と福祉制度の流れ

戦後、日本では障がい者福祉が本格的に整備され始めました。1949年には「身体障害者福祉法」が制定され、社会福祉の枠組みに障がい者関連施策が組み込まれました。

1960〜70年代になると、障がい者の雇用促進や社会参加を目指す動きが出てきました。しかし、この時期の“働く場”は主として行政が提供する措置制度や作業所・授産施設が中心で、雇用契約を結ぶ形態や一般就労に近い働き方とは距離がありました。

制度転換期:2000年代〜「障害者自立支援法」の施行

2006年の障害者自立支援法の施行により、従来の授産施設・福祉工場の位置づけが見直され、「昼間活動・就労系サービス」が明確に整理されました。この法制のもとで、就労継続支援や就労移行支援などの区分が導入され、現在のA型・B型の区分の基礎が形成されました。

本格制度化:「障害者総合支援法」と就労継続支援事業の整備

2013年に施行された障害者総合支援法により、障がい福祉サービスの対象や運営基準、報酬体系がさらに整理されました。
この時点で、A型事業所(就労継続支援A型)は「雇用契約を結び、一般企業での就労が難しい方でも雇用契約のもとで働ける支援」と明確に定義されました。福祉型作業所から就労支援型への移行が進み、「働くこと」を中心に据えたサービスとして位置づけられるようになりました。

本格制度化:「障害者総合支援法」と就労継続支援事業の整備

2013年に施行された障害者総合支援法により、障がい福祉サービスの対象や運営基準、報酬体系がさらに整理されました。この時点で、A型事業所(就労継続支援A型)は「雇用契約を結び、一般企業での就労が難しい方でも雇用契約のもとで働ける支援」と明確に定義されました。福祉型作業所から就労支援型への移行が進み、「働くこと」を中心に据えたサービスとして位置づけられるようになりました。

同じ就労継続支援の枠組みにはB型事業所もあり、A型とB型は段階的に利用できるようになっています。

A型事業所とB型事業所の違い

ここで、二つの事業所の主な違いを整理すると分かりやすくなります。

項目A型事業所B型事業所
雇用契約ありなし
給与・工賃最低賃金以上の給与作業に応じた工賃
社会保険・雇用保険条件に応じて適用基本的に適用なし
対象者一般企業での就労は難しいが雇用契約下で働ける人A型での就労が難しい人、体調や障がいに応じる人
支援内容就労訓練・環境整備・サポートで一般就労を目指す作業支援・生活リズム維持・社会参加支援
働き方の特徴一般就労に近い勤務形態マイペースで作業可能
目的雇用契約を通じて社会参加・自己実現・生活安定自分のペースで働きつつ、生活リズムや社会参加を維持

ポイント

  • A型は「雇用契約と支援体制のある働く場」、B型は「雇用契約はないが、A型より支援的で柔軟に働ける場所」、と考えると理解しやすいです。
  • B型 → A型 → 一般就労と段階的にステップアップする利用も可能です。

制度の意義・課題と今後の展望

就労継続支援A型事業は、障がいのある人が雇用契約のもとで働く機会を持てる制度です。一般企業での就労が難しい場合でも、賃金を得ながら働くことを通じて、社会参加や自己実現、生活リズムの安定につなげることができます。
また、A型とB型の段階的な支援体制により、個々の状態や目標に合わせた就労支援が可能です。

一方で、A型事業には地域・事業所間の格差があり、賃金や労働時間、支援体制に差が見られます。さらに、支援を続けながら雇用を維持するための運営コストや仕組みの整備も課題です。

今後は、短時間勤務やテレワークなど多様な働き方への対応が求められています。
また、賃金や待遇の向上、一般企業・地域との連携強化を進めることで、より実質的な就労機会の拡大が期待されます。

まとめ

就労継続支援事業は、戦後の授産施設・作業所から発展し、2000年代の制度転換を経て、「働くこと」を軸とした支援体系として整備されました。特にA型事業所は、障がいのある方が雇用契約を結んで働ける場で、最低賃金以上の給与支払いや社会保険適用の可能性があり、一般就労に近い環境で働くことができます。

現在、A型・B型を含む就労継続支援は、障がいのある方の社会参加や生活安定に重要な役割を果たしています。一方で、事業所や地域による賃金・支援体制の差が課題であり、今後は就労機会の拡大や、多様な働き方(短時間勤務・テレワーク・地域就労)への対応が求められます。

A型事業所についてもっと詳しく知りたい方は、A型事業所関連記事一覧でご覧いただけます。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

参考サイト

厚生労働省「障害者総合支援法が施行されました」(2013
就労継続支援A型事業所全国協議会(全Aネット)「就労継続支援A型事業とは」
内閣府「平成29年版障害者白書 概要 第2編 障害者支援の充実に向けた動き」
株式会社S&C「就労継続支援A型はどうしてできたのか? ~その歴史を振り返る~」(2024)