就労継続支援A型事業所 株式会社メジャーサポートサービス 浜松事業所

前回の記事では障害者雇用促進法と法定雇用率について解説しました。

法律シリーズ第2弾となる本記事では、障害者差別解消法と合理的配慮について解説します。

前回:障害者雇用促進法と法定雇用率 

法改正によって、2024年4月から、障がいのある人への合理的配慮の提供が義務化されました。

「合理的配慮とは具体的にどのようなものなのか」や、「合理的配慮の条件について」など、わかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

障害者差別解消法とは?

障害者差別解消法は、国連の「障害者の権利に関する条約(2006)」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として2013年に制定された法律です。

障がいを理由とする差別を解消し、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現することを目的としています。

参考:障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 | e-Gov 法令検索

概要

障害者差別解消法で定められていることは、主に以下の4つです。

  • 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の策定

第六条では、政府による「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下基本方針)」の策定が義務化されています。

この基本方針では、障がいを理由とする差別解消の推進のための施策の方向性や、行政機関・事業者・国及び公共団体がそれぞれ下すべき措置、またその他障がいを理由とする差別解消の推進のための重要事項について決められています。

  • 障がいを理由とする差別の禁止

第七条第一項・第八条第一項により、行政機関や事業者による障がいを理由とした差別が禁止されています。

  • 合理的配慮の提供義務

第七条第二項・第八条第二項により、行政機関や事業者は障がい者当人の性別・年齢・障がいの種類や程度に応じて、合理的配慮を提供しなくてはいけません。

  • 障害者差別解消支援地域協議会の組織

第十七条では、医療・介護・教育などの分野に関連する国や地方公共団体の機関は「障害者差別解消支援地域協議会(以下協議会)」を結成してもよいとしています。

協議会の結成によって、地域の様々な機関が情報の共有や協議などの連携を通じて、素早く問題を解決したり、再発防止のための策を講じたりすることができるようになります。

障害者の権利に関する条約

「障害者の権利に関する条約」は、2006年12月の国連総会で採択された国際条約です。

この条約では、障がい者の人権と基本的自由を確保し、尊厳の尊重を促進することを目的として、障がい者の権利の実現のための措置などについて定められています。

条約の内容は大きく分けて、

  • 一般原則(障がい者の尊厳、自律及び自立の尊重、無差別、社会への参加など)
  • 一般的義務(合理的配慮の提供拒否や障がいに基づくいかなる差別の禁止)
  • 障害者の権利実現のための措置(身体の自由や安全の保障と教育・雇用・医療・政治・文化などの各方面について締約国がとるべき措置の規定)
  • 条約の実施のための仕組み(条約の実施と監視のための枠組みの設置)

4つです。

日本は2007年9月に114ヵ国目としてこの条約に署名しました。

2024年現在、「障害者の権利に関する条約」の締約国は191ヵ国に上り、これは人権条約の中では「子どもの権利条約(196ヵ国)」に次いで二番目です。

合理的配慮とは?

障害者差別解消法では、障がいのある人から申し出があった場合には、負担が重すぎない範囲で求めに応じて合理的配慮(障がいによる社会的障壁を取り除くための措置)を提供しなければならないことになっています。

参考:事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化 | 政府広報オンライン

合理的配慮の具体例は?条件は3つ!

では、「合理的配慮」とはどのような配慮のことを言うのでしょうか?

一般的な合理的な配慮の具体例としては、次のようなものが考えられます。

  • 障がい特性に応じたコミュニケーション

手話や筆談を用いたり、声の大きさや話すスピードを変えたりして、障がい特性に応じた手段でのコミュニケーションを図る。

  • 施設のバリアフリー化

点字ブロック・スロープ・手すりなどを設置し、施設のバリアフリー化を進める。

  • 出退勤の時刻・休憩時間・休暇の調整

障がい者当人の障がいの程度に応じて、出退勤の時刻の調整や休憩時間の設定をしたり、通院のための休暇を認めたりする。

また、「合理的配慮」は、

①本来の業務に付随するものである

②社会的障壁を取り除くためのものである

③事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない

という3つの条件を満たしているものとされています。

「過重な負担」を伴う場合は配慮不要?

もし障がいのある人からの要望が「過重な負担」を伴う場合には、合理的配慮の提供義務は適用されないことになっています。

「過重な負担」かを判断する際に考慮すべき要素は、

①事業への影響の程度

②実現困難度

③費用・負担の程度

④事業の規模

⑤財務状況

⑥公的支援の有無

6つです。

例えば、

  • ペットショップで、犬や鳥の鳴き声に対して聴覚過敏があるので、それらの動物は取り扱わないようにしてほしいと申し出があった。
  • 二階席のある飲食店で、車いすでは階段を登れず、1階席が埋まっていると店を利用できないので、エレベーターやスロープを設置してほしいと申し出があった。(物理的にエレベーターやスロープを設置が不可能な場合)

などの場合は、「過重な負担」を伴うと判断できるため、合理的配慮の提供義務は発生しません。

ただし、もし要望が過重な負担を伴うと判断した場合でも、建設的な対話を重ねた上で、可能な範囲で社会的な障壁を取り除けるよう努めなければなりません。

先程の例であれば、

  • 犬や鳥類の取り扱いを辞めることは難しいことを説明した上で、鳴き声の大きな動物の展示スペースを隔離する。
  • 物理的にエレベーターやスロープは設置できないことを説明した上で、障がいの程度によっては介助を申し出たり、1階席に障がい者優先席を設けたりする。

などの対応が必要です。

「不当な差別」をしてしまわないために

しかし、障がいのある人からの要望を叶えなくても良いケースがある一方で、「不当な差別(障がいを理由とする差別)」をしてしまわないように注意を払う必要があります。

例えば、

  • 介助者を同行させてほしいという申し出を、事業の遂行に支障がないにもかかわらず拒否する。
  • 障がい者だからという理由でサービスの提供を拒否したり、後回しにしたりする。
  • 障がい者だからという理由で雇わなかったり、賃金を低く設定したりする。

などは「不当な差別」に該当します。

障がいを理由とする「不当な差別」は、障害者差別解消法で禁止されています。「誰もが生きやすい社会」の実現のためにも、決してしてしまわないよう、一人一人が気を付ける必要があります。

まとめ

  • 障害者差別解消法(2013)は、国連の「障害者の権利に関する条約(2006)」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として2013年に制定された法律で、障がいを理由とする差別の解消を目的としている。
  • 障害者差別解消法では、障がいを理由とする差別の禁止や、障がいのある人への合理的配慮の提供義務などが定められている。
  • 合理的配慮とは、障がいによる社会的障壁を取り除くための措置のことである。
  • 「過重な負担」を伴うと判断した場合には、合理的配慮の提供義務は発生しないが、建設的な対話を重ねた上で、可能な範囲での対応をとる必要がある。

いかがだったでしょうか?

近年、「合理的配慮」という言葉をよく聞くようになりました。

しかし、具体的にどのようなものがあるのか、細かい定義はどうなっているのかなど、考えることはあまりなかったですよね。

この記事がそのきっかけとなり、社会が障がいのある人たちにとって、より生きやすいものになったらいいなと思います。

次回は、「障害者総合支援法と就労支援」について解説します。

では、次回の記事でまたお会いしましょう!

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