就労継続支援A型事業所 株式会社メジャーサポートサービス 浜松事業所

法律から見る障がい者にとって「理想の職場」とは?

3回にわたって障がい者の就労に関する法律について解説してきた「法律シリーズ」も、今回でいよいよ最終回となります。

本記事ではシリーズの総まとめとして、「障がい者にとって理想の職場とは?」という問いへの結論を出します。

この記事が少しでもあなたの就職活動の助けになれば幸いです。

シリーズ記事一覧

①:障害者雇用促進法と法定雇用率 

②:障害者差別解消法と合理的配慮

③:障害者総合支援法と就労支援

積極的に障がい者を雇用している

障害者雇用促進法によって、厚生労働省が定める「法定雇用率」を満たしていない企業は、月ごとに調整金を納めなければいけないことになっています。

この法定雇用率の達成状況は、その企業の障がい者雇用に対する姿勢を測る上での一つの指標になります。

積極的に障がい者を雇用している企業は福祉の意識が高く、他の企業に比べて障がいにも理解があると言えるのではないでしょうか。

2024年11月現在、法定雇用率は2.5%で、2026年にはこれが2.7%まで引き上げられる予定です。

参考:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

「もにす認定」がおりている企業は狙い目!

障がい者の雇用率で企業を選ぶ時には、「もにす認定」がおりている企業がおすすめです。

もにす認定とは、厚生労働大臣が障がい者の雇用の促進・安定のための取り組みの実施状況が優良な企業を認定する制度です。

もにす認定の主な認定基準は以下のようになっています。

[ 1 ] 障害者雇用への取組(アウトプット)、取組の成果(アウトカム)、それらの情報開示(ディスクロージャー)の3項目について、各項目ごとの合格最低点に達しつつ、合計で50点中20点(特例子会社は35点)以上を獲得すること

[ 2 ] 雇用率制度の対象障害者を法定雇用障害者数以上雇用していること(後略)

[ 3 ] 指定就労支援A型の利用者を除き、雇用率制度の対象障害者を1名以上雇用していること

[ 4 ] 過去に認定を取り消された場合、取消しの日から起算して3年以上経過していること

[ 5 ] 暴力団関係事業主でないこと

[ 6 ] 風俗営業等関係事業主でないこと

[ 7 ] 雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと

[ 8 ] 重大な労働関係法令違反を行っていないこと

引用:障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度|厚生労働省

[2]にもある通り、認定を受けるためには法定雇用率を達成しなければいけませんから、もにす認定がおりている企業は障がい者の雇用に積極的であると言えるでしょう。

また、他の認定基準を見ると、単に法定雇用率を達成しているだけでなく、労働環境の質もある程度は保障されているのも安心ですね。

もにす認定がおりている企業の情報は、厚生労働省と都道府県労働局のホームページに掲載されています。

厚生労働省HP:障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)認定事業主一覧|厚生労働省

静岡労働局HP:「障害者雇用優良中小事業主認定制度」について

雇用障がい者数が極端に低い企業は避ける

障がい者の雇用に積極的な企業を選ぶことができるように、障がい者の雇用に消極的な企業を避けることもできます。

障害者雇用促進法では、障がい者の雇用の促進が必要であると認められた事業主には、「障がい者の雇用に関する計画書」を厚生労働大臣に提出することが義務付けられています。

もしこの計画書を提出しなかった場合や、計画書が不適当であるという勧告を受けてもそれを無視した場合には、企業名を公開してもよいということになっています。

これらの企業名は、厚生労働省のHPで公開されています。

厚生労働省HP:障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表について|厚生労働省

障がいを抱えながら働くことに理解がある

2024年4月、障害者差別解消法の改正によって、障がい者に対する合理的配慮の提供が義務化されました。

この、合理的配慮の提供義務がどのくらい履行されているのかということも、「優良企業」の指標になります。

参考:リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」 – 内閣府

合理的配慮とは?

「合理的配慮」という言葉だけを聞いても、なんだかフワッとしたイメージが湧いてくるだけで、具体的にどんなものかはよくわからないですよね。

合理的配慮とは、障がいによる社会的障壁を取り除くための措置のことです。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 視覚障がいがある場合に、業務連絡は全て対面や音声通話にしたり、チャットの読み上げソフトを導入したりする。
  • 聴覚過敏がある場合に、別室での作業やヘッドフォンの使用を認める。
  • 手すりやスロープなどを設置し、施設をバリアフリー化する。
  • 通院のための休暇を認める。

合理的配慮をしっかりと提供してくれる企業であれば、このような要望は申し出れば応じてくれるはずですから、面接の時などにどのような配慮が必要なのかをこちらから伝えるようにしましょう。

一般雇用と同じ待遇で働けるか

障がい者雇用で働く時に気になるのが、一般雇用との待遇の違いです。

障害者雇用促進法と障害者差別解消法では、障がい者であるということを理由に、賃金・教育訓練・福利厚生施設の利用において不当な差別的扱いをすることを禁止しています。

(障害者に対する差別の禁止)

第三十四条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。

第三十五条 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。

引用:障害者の雇用の促進等に関する法律 | e-Gov 法令検索

つまり、一般雇用の人と同じ時間・同じ仕事をすれば、同じだけの給与を受け取ることができます。

「障がい者の短時間労働」は当たり前になる?

2022年の障害者雇用促進法改正によって、週の出勤時間が10時間以上20時間未満の障がい者を雇用した場合にも、法定雇用率の計算に入れることができるようになりました。

このような法改正が行われたのは、精神障がい者を中心に、障害特性によって長時間の労働が難しい人が多くいることが「直近の課題」とみなされたためです。

今後、短時間労働での障がい者雇用が増えれば、障がいを抱えながら働く人の幅はぐんと広がることになるでしょう。

30h以上20h以上30h未満10h以上20h未満
身体障がい者1
(重度の場合2)
0.5
(重度の場合1)

(重度の場合0.5)
知的障がい者1
(重度の場合2)
0.5
(重度の場合1)

(重度の場合0.5)
精神障がい者10.5*0.5

*当面の間は1カウントとする措置が取られている

障がい福祉制度を利用するという選択肢もある

障害者総合支援法では、障がい福祉制度の制定や障がい福祉サービスの提供を通して、障がい者の地域社会での自立した生活を支援することが決められています。

つまり、自分の力だけでは生活の水準が下がってしまったり、思うように就職活動が進められない場合には、福祉の力を頼るという選択肢もあるということです。

働きながら利用できる障がい福祉制度

障がい福祉制度の中には、働きながら利用できるものもあります。

  • 基本相談支援

相談支援事業所を利用することで、日々の困りごとや福祉に関する助言と情報提供を受けられます。

  • 自立支援医療

障がいに関わる医療を受ける際に、医療費の負担を軽減する制度です。

負担額は前年の所得によって変わりますが、最も所得が少ない区分の場合、負担額は1割になります。

  • 就労定着支援

就労支援サービスを経由して一般就労した場合に利用することができます。

主な支援内容は職場訪問や面談などで、安定的かつ長期的に働けるように支援します。

  • 障害年金

障害者基本法で支給することが決められていて、二ヶ月に一回、種別と等級に応じた金額が受け取れます。

短時間労働や後述の福祉就労をする場合にはどうしても賃金が低くなってしまうので、利用を検討してみるといいかもしれません。

一般就労が難しい場合は?

一般就労がどうしても難しい場合には、福祉就労をするという選択肢もあります。

福祉就労とは、就労支援系の障がい福祉サービスを利用しながら働く事です。

就労継続支援A型就労継続支援B型就労移行支援
雇用契約結ぶ結ばない結ばない
給料最低賃金以上工賃(出来高制が多い)なし
通所頻度基本週5日週1~5日週1~5日
利用期間制限なし制限なし原則2年以内

福祉就労をするメリットとしては、

  • 障がいや病気に理解のある環境で働く事ができる。
  • 作業内容が簡単なものが多い。
  • 自信がつく。

などが挙げられます。

まとめ

  • 障がい者雇用に積極的な企業は障がいに理解がある傾向があり、特に「もにす認定」がある企業は確認しておくべきである。
  • 障がい者が働く上で、合理的配慮の提供義務の履行度合も働きやすさの指標になるため、何か要望があれば面接などの際に伝えるようにするとよい。
  • 2022年の障害者雇用促進法の改正によって、精神障がい者を中心に短時間労働も法定雇用率の計算に入れる事ができるようになっており、今後は短時間での雇用も増えて行くと考えられる。
  • 一般就労が難しい場合にも、福祉就労をするという選択肢がある。

いかがだったでしょうか?

今はまだ障がいを抱えながら働くには息苦しいことも多いかもしれません。

しかし、この数十年で法整備は飛躍的に進んでいて、今後も障がい者がもっと生きやすくなるような施策が実施されていくことと思います。

その結果、障がいのあるなしに関わらず、一人一人がのびのびと働けるような社会になるといいですね。

では、次回の記事でまたお会いしましょう!

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