「法律シリーズ」第3弾となる本記事のテーマは、「障害者総合支援法と就労支援」です。
障害者総合支援法によって、障がい者の自立した生活を支援するための様々な障がい福祉サービスを提供することが決められています。
この記事を読むことで、「一般就労ができなくてもまだ選択肢はあるんだな。」と、希望を持っていただければ幸いです。
目次
障害者総合支援法とは?
障害者総合支援法は、障害者自立支援法(2005)が2012年に改名・改正されて成立した法律です。
障がい福祉サービスの充実や新たな障がい保険福祉施策の実施を通して、障がいのある人の地域社会での生活を総合的に支援することを目的としています。
参考:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 | e-Gov 法令検索
支援の対象
障害者総合支援法では、
- 身体障がい者
- 知的障がい者
- 精神障がい者(発達障害を含む)
- 指定難病患者
が支援の対象となっています。
主な障がい福祉制度やサービス
障害者総合支援法によって取り決められた障がい福祉制度やサービスのことを、自立支援給付と言います。
自立支援給付には以下のようなものがあります。
- 介護給付
障がい者が日常生活を送る上で必要な支援を受けるためのサービスです。
名称 | 説明 |
居宅介護 | 障がい者の自宅で入浴・排せつ・食事などの介護を行う。 |
重度訪問介護 | 重度の肢体不自由者で常に介護が必要な人を対象に、自宅で入浴・排せつ・食事などの介護を行う。 |
同行援護 | 視覚障がいのある方に付き添って、移動に必要な情報の提供を行う。 |
行動援護 | 精神障がいや知的障がいのある人に付き添って、身の周りの危険を回避する為の援護や、移動の際の介護を行う。 |
療養介護 | 医療と常時介護が必要な人に、医療施設内で機能訓練・療養上の管理・看護・介護・日常生活の世話を行う。 |
生活介護 | 常に介護が必要な人に、障がい者支援施設内で入浴・排せつ・食事などの介護や、生産的活動・創造的活動の機会の提供を行う。 |
短期入所 | 自宅で介護する人が病気などで介護を行えない場合に、短期間、障がい者支援施設で入浴・排せつ・食事などの介護を行う。 |
重度障害者包括支援 | 特に介護が必要な人に、居宅介護をはじめとする障がい福祉サービスを包括的に提供する。 |
施設入所支援 | 施設に入所する人に、夜間の介護(入浴・排せつ・食事など)を行う。 |
- 訓練等給付
障がい者が自立した生活をするために、機能・生活・就労などの訓練が受けられるサービスです。
名称 | 説明 |
自立訓練 | 一定期間、身体機能や生活能力を向上させるための訓練を行う。 |
就労移行支援 | 一般就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識や能力を向上させるための訓練を行う。 |
就労継続支援 | 一般就労が困難な人に、生産活動の機会を提供し、就労に必要な知識や能力を向上させるための訓練を行う。 |
就労定着支援 | 障がい福祉サービスを利用して一般就労した人に、就労の継続のために必要な支援を行う。 |
自立生活援助 | 施設入所支援や共同支援援助を受けていた人に、定期的な居宅訪問や随時の対応によって、自立した日常生活を営むために必要な支援を行う。 |
共同生活援助 | 共同生活を行う住居での夜間の相談や介護(入浴・排せつ・食事など)や居宅生活を希望する人への支援を行う。 |
A型事業所はこれらのうち、「就労継続支援」に含まれます。
詳しくは記事後半で詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 相談支援給付
障がい者が介護給付や訓練等給付を受けるための計画を作成したり、日常的な生活の相談ができるサービスです。
名称 | 説明 |
基本相談支援 | 障がいのある人やその家族に、福祉に関する情報提供と助言を行う。 |
地域移行支援 | 障がい者支援施設や精神病院から地域社会での生活への移行の為に必要な支援を行う。 |
地域定着支援 | 自宅で生活している障がい者と常に連絡体制を確保し、緊急事態などに必要な対応を行う。 |
継続サービス利用支援 | 障がいのある人が障がい福祉サービスを利用するための「サービス等利用計画」の作成と見直しを行う。 |
これらのサービスを提供しているのが、相談支援事業所です。
この相談支援事業所は、A型事業所を利用する時にも必ず利用することになります。
相談支援事業所について別記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
おすすめ記事:相談支援事業所とは?
- 自立支援医療
障がい者が障がいに関わる医療を受ける際に、医療費の負担を軽減する制度です。
詳しくは以下の記事をご覧下さい。
おすすめ記事:自立支援医療制度と重度心身障害者医療費助成制度
- 補装具費給付
障がい者の身体機能を補完する器具の購入や修理にかかる費用の一部を国が負担する制度です。
補装具の具体例としては、義肢・補聴器・車椅子などがあります。
就労支援制度について
就労支援制度の種類
障がい者向けの就労支援制度には、以下の4種類があります。
- 就労継続支援A型(A型事業所)
障がいや病気のために一般就労が難しい人と雇用契約を結ぶことで、就労の機会を提供します。
給料は最低賃金以上が保障されていますが、利用者の扱いは「正社員」となるので、毎日安定して通所することが望ましいです。
また、一部のA型事業所は一般就労のサポートにも積極的に取り組んでいます。
- 就労継続支援B型(B型事業所)
障がいや病気のために一般就労が難しい人に、生産活動や創作活動の場を提供します。
B型事業所では工賃(給料)が出ますが、雇用契約を結ばないので金額は事業所によってまちまちです。
しかし、通所の頻度や時間の自由度は高いです。
- 就労移行支援
一般就労を希望する障がい者に、就職のために必要なマナーやスキルのトレーニングを行います。
就労移行支援でも雇用契約は結ばないので特に給料は発生しません。
また、就労支援制度は一般就労が難しい人が対象となっているので、副業やバイトなどをすることも原則禁止です。
とは言え、就職活動に専念できる環境は整っていますから、長い目で見れば最も安定して高い収入を得ることができます。
就労移行支援事業所について、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
おすすめ記事:就労移行支援事業所ってなに?
- 就労定着支援
A型事業所や就労移行支援事業所を利用して一般就労した人が、安定的かつ長期的に働けるよう支援します。
主な支援内容は職場訪問や面談の実施などです。
職業訓練との違い3つ
就労支援制度(就労継続支援と就労移行支援)に似た制度に、職業訓練があります。
就労支援制度と職業訓練の主な違いは、対象者・通所頻度・申請先の3つです。
就労支援制度 | 職業訓練 | |
対象者 | 障がいや難病のある人 | 一般就労を希望する全ての人 |
通所頻度 | 週1~5日 | 週5日 |
申請先 | 各市町村の福祉課 | ハローワーク |
就労支援制度を使うべきなのはこんな人!
就労支援制度を使うべき人には、以下のようなパターンが考えられます。
- 一般就労は難しいけど、障がいに配慮のある環境での軽い労働ならできそう。
→就労継続支援A型
- 働くのは無理でもできるだけ外に出る時間を増やしたい。
→就労継続支援B型
- 一般就労を希望していて、就職活動に専念したい。
→就労移行支援
- 一般就労を希望していて、お金を稼ぎながら就職活動をしたい。
→就労継続支援A型
- 就労移行支援を利用して一般就労したけど、長く続けていけるか不安だ。
→就労定着支援
まとめ
- 障害者総合支援法(2012)は、障がい福祉を通して障がいのある人の地域社会での生活を総合的に支援するための法律である。
- 障害者総合支援法では、身体障がい者・知的障がい者・精神障がい者(発達障害を含む)・指定難病患者が支援の対象となっている。
- 障害者総合支援法によって取り決められた障がい福祉制度やサービスのことを、自立支援給付と言い、自立支援給付には、介護給付・訓練等給付・相談支援給付・自立支援医療・補装具費給付の5つがある。
- 就労支援制度には、就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労移行支援・就労定着支援の4種類があり、それぞれの制度の特色を理解した上で、自分に適した制度を利用すると良い。
いかがだったでしょうか?
現時点では一般就労が難しい方にも、まだいくつかの選択肢が残されていることがわかっていただけたと思います。
また、就労以外にも様々な面での支援が受けられるというのもとても心強いですよね。
さて、次回はいよいよ本シリーズの総まとめ回となります。
では、次回の記事でまたお会いしましょう!