身体や精神に障がいがある20歳以上の人が申請し、認められることで支給される「障害年金」。
でも、年金の支給額だけで、自立した生活を送るのは難しいという方は多く、「少しでも働いて、収入を得たい」と思っている方も多いのでは?
で、いざ働ける範囲で働きたいけれど気になるのは、障害年金の「所得制限」。
巷では「週20時間以上働くと支給が止まる」といった都市伝説も飛び交っていますが、本当のところはどうなのか?
今回は、弊社メジャーサポートサービスへの応募を考えている方はもちろん、障害年金を受給しながら働きたいすべての方へ、「障害年金の所得制限」について分かりやすくご案内します。

👩🦼【重要】「所得制限」がある人とない人がいる!
「障害年金を支給されて働いている人は、一律にみんな所得制限がかかる」と思われがちですが、実はそうではありません。
制度を知っている人ほど「それは切ない……」と感じてしまう、「初診日」という大きな境界線がそこにはあるのです。
日本年金機構:🔗20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等
【所得制限がない人】20歳以降、年金保険料を払ってきた人(例外あり)
ここでは、20歳以降、厚生年金や共済年金を払ってきたのか、国民年金保険料のみを払ってきたのかで少し変わるため、分けてお話しします。

20歳以降、厚生年金や共済年金を払ってきた人(例外あり)
①受け取れる年金の種類(年金等級)
受け取れる年金は、「年金の等級」によって決まります。
※年金の等級は、障害者手帳の級とは異なります。
- 1級・2級: 「障害厚生年金」と「障害基礎年金」のダブル受給
- 3級: 「障害厚生年金」のみ受給
②給料が高くても「全額」もらえる
この場合は、たくさんお給料をもらっても、たくさんの時間働いても所得制限が一切ありません。(例外あり)
国は「あなたがこれまで納めてきた保険料の払い戻し(正当な権利)」というスタンスをとっています。「自分で積み立てた権利なのだから、お給料がいくらあっても全額お返しします」というのが基本ルールです。
③ただし「初診日」という大きな例外がある
実は「初診日(障害年金を申請する要因となった病気やケガに対しての医師の診察を最初に受けた日)」がいつかによって、このルールがガラリと変わってしまうケースがあります。
この例外については、後述の『「初診日」で区切られる理不尽さ』の項目でお話しします。
20歳以降、国民年金保険料のみを払ってきた人(例外あり)
①受け取れるのは「障害基礎年金」のみ
この場合、受け取れるのは障害基礎年金のみです。
※年金の等級は、障害者手帳の級とは異なります。
- 1級・2級: 障害基礎年金のみを受給
- 3級: 受給なし(基礎年金には3級という枠自体がありません)
②給料が高くても「全額」もらえる
厚生年金の場合と同様、20歳以降にケガや病気をして保険料を納めてきたのであれば、所得制限は一切ありません。(例外あり)
「自営業で売上がしっかりあるから支給が止まる」といったことはありません。国は、あなたが納めてきた保険料に対する「正当な権利(払い戻し)」として全額を支給します。
③ただしここにも「初診日」という大きな例外がある
非常に重要なのが、やはり「初診日(障害年金を申請する要因となった病気やケガに対しての医師の診察を最初に受けた日)」です。 もし、その病気の初診日が「20歳になる前」にある場合は、たとえ20歳以降にどれだけ保険料を納めていても、「20歳前傷病」という福祉的な性質の年金として扱われます。
この「20歳前傷病」に該当してしまうと、一転して厳しい所得制限が課せられることになります。
この例外についても、後述の『「初診日」で区切られる理不尽さ』の項目でお話しします。
【所得制限がある人】20歳前に初診日があり、年金を支払った実績がない人
ここに該当する方の多くは、生まれつきの病気や、幼いころのケガにより初診日が20歳以前にあり、20歳になると同時に障害年金を支給されているため、これまでに年金を支払った実績がない方です。

①受け取れるのは「障害基礎年金」のみ
20歳になった時点から、障害基礎年金のみを受給できます。
※ここでも年金の等級は、障害者手帳の級とは異なります。
- 1級・2級: 障害基礎年金のみを受給
- 3級: 受給なし(基礎年金には3級の枠がありません)
②給料が高すぎると「停止」になる(所得制限)
この場合では、一定以上の所得があると年金が「半分」または「全額」の支給が停止します。ここが、これまで説明したケースとの決定的な違いです
国は「保険料を納めた実績はないですが、あなたを助けるため、国が福祉として年金を支給します」というスタンスをとっています。福祉の性質を持つ年金のため、「自分である程度の収入があるなら、年金は出せませんよ」という制限がかかるのです。
厚生年金や共済年金を払った期間と国民年金保険料を払った期間の両方がある場合は「制限なし」
この場合、障害年金を申請するきっかけとなったケガや病気の初診日(最初に病院にかかった日)が、厚生年金や共済年金を払っていた期間にあるのか、国民年金保険料を払っていた期間にあるのかで分けられます。
例えば、30年間、厚生年金を納めてきたけれど、転職活動中のたった1ヶ月間の国民年金を支払っていた時にケガを負い(そこが初診日になる)、障害年金を申請した場合、障害基礎年金しか支給されないという残酷なことになりますが、初診日が20歳以降となるので、所得制限はありません。
💰具体的な「所得制限」はいくら?
では、「20歳前傷病」に該当する場合、具体的にいくらまでなら稼いでも大丈夫なのでしょうか。
二段階の支給停止ルール
所得制限には、2つのボーダーラインがあります(※単身者の場合)。
- 支給の「2分の1」が止まるライン:所得 約376万円 (年収に換算すると、およそ518万円くらい)
- 「全額」の支給が止まるライン:所得 約479万円 (年収に換算すると、およそ645万円くらい)
<年収と所得の違いとは?>
年収: お給料の額面(総額)のこと。まだ何も引かれていない、一番大きな金額です。
所得: 年収から「給与所得控除(会社員としての経費)」を差し引いた金額のこと。
障害年金のストップがかかる基準(376万円)は、この「所得」の方で判断されます。給与所得控除は、主に12月の年末調整で、1年間の給与総額から自動的に差し引かれます。
A型事業所での就労なら「ほぼ大丈夫」
数字だけ見ると大きく感じますが、弊社メジャーサポートサービスを含む、就労継続支援A型事業所での平均的なお給料であれば、この制限にかかることはまずありません。
しかし、A型事業所の仕事以外で、不動産収入などの収入があったり、あるいは実家の家業を手伝って報酬を得ているなど、副収入がある場合は注意が必要です。

😩「初診日」で区切られる理不尽さ
これまでのお話で登場する「初診日」という鉄壁の理不尽。これが先程の「所得制限なし」の「例外」に当たる部分です。
このルールからこぼれ落ちている「例外」の人が、実は意外と多く、当てはまる人は、理不尽な思いを強いられることになっています。

例えば40代まで年金を納めてきても……
例えば、生まれつきの持病がありながらも、20歳から40歳まで病気とともに懸命に働き、厚生年金保険料を20年間も納めてきた方がいるとします。
41歳で持病が悪化して働くのが難しくなり、やむなく障害年金を申請することになりました。 この時、「一番最初の診察」が20歳前にあると、初診日は20歳前に。その方はどれだけ保険料を納めてきていても「20歳前傷病」の枠組に入れられ、障害厚生年金は支給されずに障害基礎年金のみの支給となり、さらに所得制限がついてしまいます。
また、20歳から40歳まで国民年金保険料を納めてきた場合でも、所得制限がついてしまうため、せっかく払ってきたのにと、やりきれなさを抱えることになります。
努力が反映されない「初診日の縛り」
長年、病気と闘いながら年金を納めてきたというのに、初診日が20歳前というだけで、いざ、自分の体が思うようにいかなくなった時に助けてもらえないという冷たい現実。
現在の日本の障害年金の制度では、「何年納めたか」よりも「いつ初めて病院に行ったか」が優先されてしまうのです。
この「初診日の縛り」は、長く厚生・共済年金を納めてきた人にとっては、所得制限だけでなく、障害年金の支給額も大幅に下がってしまうため、大きな理不尽を抱えることになり、この矛盾に、憤りを感じずにはいられません。
🤔わずかな可能性にかける「逆転の切り札」
20歳以降に年金保険料を支払ってきたのに、「初診日」の縛りで障害基礎年金しか受給できていない・所得制限がかかっている人にとっての突破口は、本当に難しい小さな風穴かもしれませんが、わずかながらに残されています。
でも、これを突破して障害厚生年金を得たり、所得制限をなくすことは本当に難しく、逆に心をすり減らしてしまうかもしれません。しかし、やらずに苦しい思いを抱いているよりやった方がいい!と考える方には、以下の切り札もあることをお伝えします。検討すべき「逆転の切り札」は主に2つです。

①「社会的治癒」を主張する
これが最も現実的で、かつ強力な手段です。
たとえ子供の頃(20歳前)に受診歴があっても、その後に通常の社会生活を送れる状態がある程度の期間続いている場合には、傷病が治癒したと見なして、再発して受診した日を「新たな初診日」として認めてもらえる場合があります。
<相談のポイント> 「子供の頃に受診はしましたが、その後10年間は通院せず、厚生年金に加入して普通に勤務していました。この再発した日を初診日にできませんか?」と切り出します。これが認められれば、所得制限なしの「障害厚生年金」と「障害基礎年金」の2階建て受給に変わる可能性があります。
はじめての障害年金申請代行センター:🔗【障害年金】社会的治癒を主張した方が良いのはどんな人?
②「初診日」の定義を再確認する
障害年金における初診日は「その病気に関連する症状で、初めて医師の診察を受けた日」です。 もし、20歳前の受診が「今の病気とは全く無関係」だと医学的に証明できれば、20歳以降の受診を初診日に設定し直せます。
相談のポイント:「昔の受診は別の原因によるもので、今の障害に直接つながるものではない」という医師の意見書などを用意できるかどうかが鍵です。
証明できない場合は「第三者証明」を活用する
もし「20歳以降に初診日があるはずなのに、当時の病院が潰れて証明できない」といった理由で、消去法的に初診日が20歳前にしか証明できないなど場合は、友人や同僚などの「第三者証明」によって、20歳以降の初診日を確定させることができます。
日本年金機構:🔗初診日に関する第三者からの申立書を提出するとき
初診日を覆すのは、とてつもなく難しい!
正直なところ、年金事務所の窓口へ自分一人で出かけて、初診日が20歳以降であると再度証明するのはとても難易度が高く、心と時間をすり減らす可能性があります。
こういった専門的な主張をする場合は、障害年金に強い社会保険労務士(社労士)に一度相談することを強くお勧めします。

😣所得制限以外にも「更新」で年金停止されるリスクもある!
所得制限(金額による停止)とは別に、もう一つ大切なことがあります。それは、数年ごとにある「更新」の審査です。
「働けている=治った」と思われるリスク
金額的な制限がない「障害厚生年金」の方であっても、しっかり働けていることが原因で「日常生活に支障がない」と判断され、等級が下がってしまい、支給額が減ったり支給がなくなるケースがあります。
特に精神疾患や内部障害などの場合は、見た目ではその苦労が伝わらないことが多く、更新時に減らされてしまうことも。
更新時は主治医の先生の診断書の内容や身体測定などが、大きく加味されますので、自分の普段の生活で病気やけがによって大変だと思うことを、主治医の先生へしっかり伝えておくことが大切です。
職場の「配慮」を正しく伝える
もし更新時に働いているのであれば、職場で「どのような配慮を受けて働けているか」を主治医や診断書にしっかり盛り込んでもらうことも重要です。
「休憩を多めにもらっている」「指示を紙で書いてもらっている」「時短勤務である」といった「支えがあるから働けている現状」を伝えることが、年金を継続するためには大切です。
☝️【重要】最初の申請時に、制度をよく知っておくことが大切
これまでの解説の通り、障害年金は一度提出した申請内容を後から覆すことが非常に困難な制度です。
特に20歳を過ぎ、年金保険料を納めてきた実績がある状態で申請する場合は、事前の「徹底した調査」がこれからの暮らしを分けます。申請前に、必ず以下の項目をチェックしましょう。
「初診日の証明」ができるか確認する
<病院の存続確認>最初に受診した病院が今も存在している場合は、カルテが保管されているか(廃院していないか)を電話で大丈夫なので確認しましょう。
<社会的治癒の検討>20歳前に初診がある場合、その後「5年以上、通院も薬も必要なかった期間」がないか確認します。これによって、後の受診を「新たな初診日」として扱える可能性があります。
<派生疾患の相談>20歳前の病気が原因で別の障害が出た場合、新たな症状が出た日を「初診日」として定義し直せないか、主治医に相談してみましょう。
申請時に国民年金を支払っている人は「法定免除」に注意
厚生年金を支払っている場合は問題ありませんが、障害年金の申請時に「国民年金保険料」を支払っている人は、申請時の2ヶ月くらい前から、「国民年金保険料」の支払いをやめることをお勧めします。
これは、障害年金(1級または2級)を受給することが決まると、法律に基づいて保険料の納付が免除される「国民年金保険料の法定免除」に該当するから。
法定免除は、「障害の状態になった日(認定日)」を含む月の前月から年金の支払いが免除されるルールになっています。例えば、4月から年金の受給権が発生した場合は、3月から支払いが法定免除となります。
年金の受給が決まるギリギリまで(年金証書が届くまで)国民年金を払っていると、法定免除分の返還手続きがとても大変です(なぜなの、、、?)。申請する前あたりから、国民年金の支払いはやめておきましょう。
国民年金機構:🔗国民健康保険料の法定免除制度
「もらえるお金」を最大化する検討
<遡及(そきゅう)請求の確認>「本来ならもっと早く受給できたはず」という場合、過去にさかのぼって請求できる可能性があります。認められれば、一度に数百万円単位の給付を受けられるケースもあるため、慎重な検討が必要です。
全国障害年金サポートセンター:🔗障害年金の遡及(そきゅう)請求とは
公的記録と専門家の知恵を借りる
<社労士への相談>障害年金は書類の書き方一つで結果が変わります。自分一人で抱え込まず、一度は社会保険労務士などの専門家に意見を仰ぐのが近道です。
全国社会保険労務士会連合会:🔗社労士に相談する
<納付記録の照合>「ねんきんネット」などを使い、保険料の未納期間がないか、受給要件を満たしているかを正確に把握しておきましょう。
日本年金機構:🔗ねんきんネット

😰【まとめ】障害年金は「初診日」がすべて
障害年金は「初診日」がとても重要で、それによって支給額や所得制限が大きく変わるということがわかりましたが、なぜ「初診日」が重要なのか?という国の考えとしては、、、
「具合が悪くなってから慌てて保険料を払う」という後出しジャンケンを防ぐため。
(※厚生労働省:国民年金法に基づく補完的福祉年金の支給について [しかし、一読するのは大変です])
しかし、年金を納めていた期間、納めたタイミングを見ればそれは一目瞭然であり、私はこれは違うのではないか?と感じています。
年金という言葉は、どうしても基本的に65歳以降で支給される「老齢年金」のイメージですが、年金「保険」料なのですから、本来は「困った時のセーフティネット」であるはずです。
しかし現状は、申請する際には、過去を何十年もさかのぼって病院を一つ一つ当たるなど、病気を証明するためのとてつもない手間を、病気やケガで苦しんでいる本人にすべて負わせる過酷な構図となっており、さらには、真面目に保険料を納めてきた人ほど、「初診日」という運命に翻弄され、報われない仕組みになっていると言わざるを得ません。
この初診日主義は、1961年の制度開始以来、一度も揺らぐことなく続いています。受給者が少数派であるからこそ、制度の不備や申請の複雑さが放置されているかもしれません。しかし、年金は私たちが支え合ってきた仕組みの中にある権利です。制度をしっかりと把握し、できることは主張していくこと。その積み重ねが、自分だけでなく同じ悩みを持つ方々の道しるべにもなるのではと思います。
<関連記事> 障害基礎年金と障害厚生年金の違いを、こちらでさらに詳しく解説しています。
<参考記事>
・日本年金機構:🔗20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等
・はじめての障害年金申請代行センター:🔗【障害年金】社会的治癒を主張した方が良いのはどんな人?
・日本年金機構:🔗初診日に関する第三者からの申立書を提出するとき
・国民年金機構:🔗国民健康保険料の法定免除制度
・全国障害年金サポートセンター:🔗障害年金の遡及(そきゅう)請求とは
・全国社会保険労務士会連合会:🔗社労士に相談する
・日本年金機構:🔗ねんきんネット
・厚生労働省:🔗国民年金法に基づく補完的福祉年金の支給について


